富有
柿も品種を食べ比べると、食感や甘さの違いにびっくり。甘柿の王様「富有柿」も、土壌や栽培方法によって、園ごとに味の個性があります。お気に入りの甘さと食感を見つけて下さい。
かたち、甘さ、食感も申し分ない甘柿の王様
92年の歴史を刻む田主丸の富有柿
富有・ふゆ
「富有」の原産地は岐阜県本巣郡。安政4年(1857)に小倉初衛さんが栽培した柿がすばらしく、同じ村の福嶌才治さんが家の柿に接ぎ木して見事な柿を実らせたとか。「富有」の名は、名声が天下に広がることを願ったものでしたが、各種品評会での入賞や天皇献上品に選ばれるなどして名声が拡がり、明治末から大正にかけて全国に穂木(接ぎ木にする枝のこと)が配られ、今や日本の甘柿生産の6割が富有柿となりました。
福岡県は、その富有柿の生産日本一ですが、大正3年(1914)に福岡県の四カ所で始まった柿の営利栽培のうち2名は田主丸町水縄の鳥越幸平さんと、竹野の上村七郎次さんでした。田主丸は一世紀近い歴史を刻む富有柿の産地なのです。
樹齢80年を超す富有柿の木がある園もあり、その実は歴史を感じさせるまろやかな味わい。かたち、甘さ、食感ともに申し分ない、甘柿の王様です。
● 11月初旬〜12月上旬
早生品種
西村早生
秋の訪れを告げる別名「ゴマ柿」
カリッとして、とろりと甘い柿です
西村早生・にしむらわせ
「「西村」は9月下旬〜10月上旬にかけて熟し、秋の訪れを告げる「早生もの」です。淡い橙色をしていて、切ると果肉に黒いゴマ状の模様が入っているので、別名「ゴマ柿」。西村は受粉して種ができたときだけ甘柿になりますが、このゴマが入ると甘柿になった証拠。「カリッコリッ」とした食感の後、口の中でとろっとした甘さが口に広がります。甘さは富有柿に比べて控えめ。(といっても富有がとっても甘いからですが)日持ちが良いのが特徴です。
● 9月下旬〜10月中旬
最も早熟な完全甘柿
赤々として、甘い柿です
早秋・そうしゅう
「完全甘柿」とは、受粉しなくても甘柿になる柿のこと。「早秋」は、9月下旬から10月上旬に食べ頃になり、完全甘柿の中では最も早くシーズンを迎える極早生の新品種です。実も果肉も赤々としていて、歯ごたえがあり、甘み豊かな柿です。
● 9月下旬〜10月上旬
濃い橙紅色の果肉がとても綺麗
ジューシーな甘柿です
西村早生・にしむらわせ
「「西村」は9月下旬〜10月上旬にかけて熟し、秋の訪れを告げる「早生もの」です。淡い橙色をしていて、切ると果肉に黒いゴマ状の模様が入っているので、別名「ゴマ柿」。西村は受粉して種ができたときだけ甘柿になりますが、このゴマが入ると甘柿になった証拠。「カリッコリッ」とした食感の後、口の中でとろっとした甘さが口に広がります。甘さは富有柿に比べて控えめ。(といっても富有がとっても甘いからですが)日持ちが良いのが特徴です。
● 9月下旬〜10月中旬
最も早熟な完全甘柿
赤々として、甘い柿です
松本早生・まつもとわせ
「松本も伊豆と同じく完全甘柿の早生。半月ほど早く熟すことをのぞけば、富有柿とほとんど変わらない味わい。少しひらべったく、橙紅色で光沢があり見た目も美しい柿です。富有柿に負けない甘味があり、果汁も多く、とろけるような食感です。
● 10月中旬〜11月上旬
松本早生
その他の個性的な品種(主に店頭販売や産地直送です)
太秋
柿が嫌いな人も、はまる柿?
今話題の、注目品種です
太秋・たいしゅう
果樹試験場で富有を母親として育種され、94年に「太秋」として命名されました。実は500gにもなる大玉で、果肉はサクサクとしていて「梨みたい」な独特の食感です。柿をあまり食べないという人もイメージを覆される、やみつきになる甘さと食感です。大玉ゆえに栽培は難しく、今年は台風被害で、田主丸の幻の逸品となりました。
果実の色は青みをおびていますが、実は食べ頃。皮に黒い筋の「条紋」が入っていることがありますが、実はこの条紋は糖度が高い証拠。試験場では見かけが悪くものにならないと、うち捨てられていたものの、その美味しさゆえに生産者たちが大事に育てたという逸話付き。果物の美味しさは見かけじゃない!ということが、太秋ブームで伝わるやも。来年をお楽しみに。
● 10月中旬〜11月中旬
柿のエリート
糖度が高い新品種です
新秋・しんしゅう
新秋は、柿の新品種で、糖度が22度にもなる柿「興津」を両親にもち、果樹試験場では「柿の品種エリート」といわれていれているとか。固めでも、少し軟らかく熟しても美味しい黄橙色の柿。太秋のように皮に黒い筋の「条紋」が入っていることがありますが、これも糖度がより高く美味しい証拠です。
● 10月中旬〜10月下旬
元山
「柿喰いに行くか羨まし」と詠われた
田主丸がルーツの柿
元山・がんざん
名物の柿喰いに行くか羨まし
これは田主丸大慶寺に残る、昭和14年に詠まれた東本願寺の法王の句。寺の第十三世井波潜彰師が帰国する際に、かつて寺から柿を献上した時の記憶からこの句が詠まれたものとか。田主丸町内にはこの柿「元山」の古木がいたるところにあり、法王に献上された柿だったかもしれません。句に詠んでうらやましがるほど、忘れられない味だったのでしょう。ゴマがはいって黒糖を思わせる甘さのその柿は、昭和30年代までは、高値がついていた柿の名品でした。在来種「元山」のルーツは田主丸。時代の中で忘れられた味を、今でも受け継ぐ園が残っています。
● 10月中旬〜11月上旬
愛らしいかたちの小春ちゃんは
昔懐かしい味
小春・こはる
富有柿の畑に受粉用に植えられているものもありますが、黄橙色で、ほっそりと四角く愛らしいかたちをしている「小春」。甘柿になると、ゴマが入ります。もともと古くから自家用に庭に植えられていた在来種で、コリコリとした食感と、素直な甘さの昔懐かしい味。近頃、人気復活している個性派です。
● 10月中旬〜11月上旬
小春
駿河
初めての食感とコクのある甘さ
冬の訪れを告げる超個性派
駿河・するが
へたのまわりに袋をしぼったような皺がある「駿河」。おばあちゃんの唇ともいわれる独特の風貌をしています。収穫して、しばらくおいて食べることで「追熟」し、全体が種のまわりのあのゼリー質になったような驚きの食感となります。その甘さと口当たりはマンゴーのよう。お正月にも食べられる、超個性派です。
● 12月中旬〜12月下旬
渋柿(主に店頭販売や産地直送です)
柿には「甘柿」と「渋柿」がありますが、その違いは渋み成分「タンニン」が口の中で溶けるかどうか。甘柿は成長過程でタンニンが変化して口の中で溶けなくなり、渋みを感じなくなります。渋柿をアルコールで渋抜きしたり、干し柿にすると甘くなるのも、タンニンが溶け出さなくなり、甘柿とはまた違った芳醇な甘さで人気があります。
上品な甘さとまろやかな食感
渋柿の女王
西条・さいじょう
800年の歴史がある「西条柿」。うっすらとした黄色で4本の溝がはいった愛らしいロケット型の渋柿で、やわらかすぎず、固すぎない口当たりと品な甘さが最上だからその名があるともいわれています。渋抜きして食べたり、玉揃いがよいので干し柿にも最適。甘柿とはまた違った、コクのある甘さです。
● 11月初旬〜12月上旬
昔っからの干し柿の柿
葉隠・はがくし
福岡が原産地の「葉隠」は、古くから栽培の記録が残る渋柿です。黄色で、ほっそりと四角ばったかたちをしていて、干し柿はこれでなくてはという人も多い渋柿です。
葉隠